新女類
真悟の心
入社して1年。
本当にがむしゃらに美花さんだけの言いつけを守り、忠実に働きました。
美花さんから教わったことは「会社は休まない」「言い訳はしない」「常に前を見る」「妥協をしない」…等々でしょうか。
仕事以外では何かストレスがたまると、飲みに連れて行かれます。
僕はあんまり飲めないので、最初は断ったんですが無理やり連れて行かれました。
それからも、ストレスがたまるとやはり無理やり飲まされます。
でも、何度か付き合ううちに美花さんもあまり飲めない人なんだということがわかりました。
だから、あまり飲めない僕はちょうどいい飲み仲間みたいです。
今までは元課長の北条拓人さんが美花さんの飲み友達だったようです。
飲みにいく店もだいたい決まっていて、少しお酒の力を借りて言いたいことを僕にぶつけてきます。
他ではいえないことみたいで…美花さんは意外と人付き合いが苦手みたいなんです。
企画課の女子にも慕われていて、何の問題もないようなのですが、慣れるまでが大変みたいなんですよね。
しかも、無茶振りはいつも男で、女性には無茶振りは一切しません。
だから、ちょっと飲んで気持ちを自由にしたら何でも言える僕に相当まくしたてて話を始めます。
何でこんなに話が出てくるんだというぐらい饒舌な美花さんを初めて見たときは、本当に驚きました。
いつもはクールでほとんど無駄話がないんです。
会話もすぐ途切れるし、とっつきにくい上司でした。
それがお酒が入ると、話す話す話す…で、すっきりして次の日は元気になりまたいつものクールな美花さんに戻るのです。
僕は何か誰も知らない美花さんの一面を知っているような気がして、最近は喜びを感じます。
聞いた話によると、美花さんが飲みに誘ったのはこの僕がはじめてらしいのです。
北条さんがいるじゃないかって?北条さんは誘われたのではなく、誘うほうだったみたいです。
だから、僕が初めて誘われた男なんです。
でも、飲んで気持ちが晴れない時は大変です。
僕の嫌いなジェットコースターにやはり無理やり乗せられます。
もうこの5年で何回乗ったでしょうか?
かなり乗ったので、苦手ではなくなりましたけどね。
でも、最初はきっと僕はいつか美花さんに殺されるんだと思いました。

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