Cold Phantom [前編]
噂では既に受かっている高校もあるようで、その秀才ぶりは中学内だけに留まらない。しかしそれを自慢する様な奴では無く、その性格はサバサバしていて取っつきやすい。
故に学校内でも人気がある奴だ。

「吹奏楽の猿って言われてる奴がいきなり勉強に目覚めたのか?折角学校でも有名になるくらい吹奏楽やってたのに…」
里村はそう言うと窓から顔を出して俺に顔を向けた。
「俺だって本当は勉強なんてしたく無いんだよ。ちょっと訳あってな…」
「訳あり?吹奏楽に関係あるとか?」
「…大いにな」
「どんな?」
里村は何故か興味津々の面持ちで見つめてくる。その理由は解らないが隠す物でも無いしとりあえず一通りの事を言ってみた。

「あんなに生徒の多い学校でも廃部になる部活なんてあるんだな…」
俺と同じ感想を言ってのけた。普段想像出来ない事が起こってしまったのだから仕方ないと言えば仕方ないのかも知れないが…
しかし、言葉にして言われると尚更不思議に思えて仕方がない。それと同時に何でこんな苦労をしなければならないのかと少し苛立ちを覚えてしまう。
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