Cold Phantom [前編]
私には他人に秘密にしている事がある。
それを思い出す度に少し頭痛と吐き気がする。
それくらい私が今日経験する事が嫌だった。
何度目かも解らない位繰り返してきた事なのに、あれだけは慣れる事の無い悪夢だ。
電話の相手もそれを知っているから声は暗い。
「いつもの時間ですか?」
「あ、うん。暇が無かったらもう少し遅くなっても良いけど…」
「いえ、いつもの時間で…嫌な思いは、早めに済ませたいし。」
「祥子ちゃん…」
私は嫌みの様に答えて電話ごしに目を瞑る。
悪いのは長池さんじゃないのはよく解っている。
でも嫌みでも言わないと覚悟なんて決められない。
これは私に与えられた定めなんだと、そう決めつけるだけの覚悟が…
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