Cold Phantom [前編]
しかし、その車には大きく「槍倉記念病院」と書かれているから解らない筈がなかった。
そう、私は医者と会う約束をしていたのだ。

私は定期的にこうして医者に診てもらっている病気があった。
病気…いや、病気で片付けて良いのか良く解らない。
特殊な病気と言えば良いのか、断定するのは極めて難しい症状だった。
何せ私もよく分かってない。
ただ言える事は、私が特別な脳波を発していると言うこと。
原因は不明。
私が目覚めた…少なくとも記憶が始まった頃から既にあった症状だった。
医者曰くこの症状に何か関連する事があれば記憶のヒントにも繋がるのじゃないかと言っているが、まだ詳しい事は解っていない。
でも医者側からするとそれは二の次の事項だったりする。
医者の本当の目的はその脳波を取り除く事にあった。
その事についても私はよく分かっていないけど、その脳波を医者は危惧しているようで時折こうして医者に診察して貰っている。

私にとって生きているうちで一番嫌な時間だった。
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