Cold Phantom [前編]
そして…願い虚しく、コンビニに着く前に雨が降り始めてしまった。
「予感はしていたけどな。」
言いながら目前に迫ったコンビニへと更に早く走った。

ありがとうございましたの言葉を背中に、買ったばかりのビニール傘を開いた。
コンビニの買い物に時間がかかるわけもなく数分のうちにレジについたと言うのに、あっという間に土砂降りになっていた。
店内でさえ叩きつけるかの様な酷い雨音だったから外に出た時の酷さは相当の物だった。
バケツをひっくり返した様な雨とはまさにこの事だなと、上手い事を言った名前も解らない誰かに心中で拍手喝采していた。
だが、今の雨に関して言えば、その言葉ではある意味表現しきれていないかもしれない。
「バケツじゃなくたらいだな。こりゃ…。」
そんな冗談を言いながら、そのたらいをひっくり返した様な雨の中、頼り無さそうなビニール傘一つで家路を急いだ。
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