Cold Phantom [前編]
状況的にどう考えても俺は危ない人間なのに先輩は咎めなかった。
俺がまだ携帯に出ないのを先輩は「どうしたの?」と聞いてきた。
本当に素のようだ。
とりあえず先輩の言うように携帯に出てみた。
その内容はどうでも良いような物だった。
たけが明日の朝練の時間を電話で伝えに来たのだ。
どうでも良い訳では無いかもしれないが、そこらへんはキチッと先生に教わっているので問題はなかった。
俺は携帯を切り出来るだけ先輩を見ないように努めながら…
「それじゃあ、俺帰るッス。」
と一言だけ言って家路を急ごうとして…
「待って、ヒロ君。」
先輩に呼び止められて、足を止めた。
俺はゆっくりと先輩の方に視線を向けると、先輩は困惑した面持ちでそこにいた。
無理もない。やはり俺が今ここにいる事が変に思われているに違いない。
何か言われると覚悟を決め、先輩の言葉を待った。
しかし、先輩は思わぬ事を言ってのけた。
「私の部屋上がっていかない?雨も降ってるしさ。」
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