Cold Phantom [前編]
「雨にぬれても…か。」
俺は一言だけ呟いた。
立ち止まり街頭を見上げた。
先輩の一言を思い出して、俺は一人大きなため息をついた。

-私は5年前より以前の記憶を失ってるんだ。-

類は友を呼ぶと言うべきなんだろうか、俺は先輩のその一言に他人と思えない物を感じた。

(俺は、本当に俺なのか?)

また思い出してしまった…もう何年も前に吹っ切った筈なのに…
「似た者同士、気が合うって事なんだろうな」
俺はそう呟いて立ち止まったまま振り向く。
先輩の家はもう見えない。
「まさか、俺と同じ事に悩んでた人がこんなに身近にいたなんて…」


< 168 / 321 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop