Cold Phantom [前編]
みーちゃんは恋がしたいのだろうか?
私がそう思い始めたのは午後の授業が始まってしばらくしてからだった。
今までそんな素振りを見せなかった分が今日になって一気に爆発…と言うのは冗談として、何らかの形で恋話に関与したい気でいるのは確かなようだ。
しかし、中々どうしていきなりな話だった。
何かしらみーちゃんの考え方を改める物に出会ったのだろうか。
私はノートの上を滑らせていたシャーペンを止めそんな事を考えていた。

-それでなくても引っ込み思案で奥手なんだから、彼氏の一人でも作ってその性格治さないと駄目!-

いつかどこかで聞いた言葉を不意に思い出した。
あれは確かみーちゃんの言葉だった気がする。
恋に奥手…
正に私のためにあるような言葉だ。
私が目覚めたあの日から、記憶の手がかりを探る事ばかりを追い続けたせいだろうか、恋する事なんていつも二の次三の次になっていた気がする。
何よりも記憶の手がかりが欲しかったあの頃、自分の事を良く知らない自分である事が常に尾を引いていて、そんな私を他人に押し付けたくないと、いつも一歩引いた所から恋愛と言う物を見ていた。
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