Cold Phantom [前編]
「ヒロですか?アイツならトイレに行ってますよ。」
「トイレかぁ…」
私は一言呟くと、先程までヒロ君が座っていた椅子を見た。
いつもとは言わないが、何となくヒロ君のいない練習場所が寂しく思えてしまう。
すぐ帰って来るのを解っていても、やはりヒロ君にはそれだけの存在感があるのかも知れない。
「…どうかしたんですか?」
相変わらずボーッとしていた私は不意に犬塚さんに声を掛けられ、またはっとした。
今日は何だか呆け気味な事が多いなと私は頭を軽く振って小さくため息をついた。
「練習しよっか。」
私はそう言って視線を楽譜に集中させた。
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