Cold Phantom [前編]

「恋に恋してる女の子ってね、基本的に鈍感な物なのよ。そこにある恋に気づかない女の子って言うか。」
「そこにある恋ですか。」
「そう、それに気づけたら、祥子ちゃんが今まで考えていた事の意味が解ると思う。」
マスターはそう言って視線を外す。
「美咲が帰ってきたかな。」
マスターは外した視線を窓の外に移した。

程なくして、扉に備え付けられたベルが乾いた音を鳴らし出した。
「ま、マスター…こ、これ虐待でしょ。」
現れたのは言うまでもなくみーちゃん。
山盛りになったバッグを抱えながら汗だくで帰ってきた。
「おぉ、ご苦労ご苦労。やっぱり美咲は違うねぇ。流石二号。」
「に、二号？」
「ほら昔から言うでしょ、技の一号。」
言って私を指差した。
続いて…
「力の二号ってね。」
とみーちゃんを指差した。
「マスター、やっぱり苛めてるでしょ。」
「え、何で？私は適材適所だと思ったんだけど？」