Cold Phantom [前編]

俺はゆっくり窓から顔を離し、窓に背を預け里村と同じく楽な体制をとった。
「それで、猿はどうしたい？」
「どうもこうもしねぇよ。どちらにしろ当たって砕けるしか俺には出来ないから当たって砕けてくる。」
「なんか、言ってる事が虚しく聞こえてくるな…。」
「…そう言われると確かに。」
…どうせ当たるなら砕けないくらいの方がいいに決まっている。
でも、そんなに甘くないのも良く解っている。
この学校に…いや、そもそも進学校に受かった事ですら奇跡に近い俺の悪運の強さも、正直継続させられる程の自信は無い。
頭は悪い、運には頼りきれない。
ならどうするか、知れた事だった。
成功するまで当たって砕ける。
それしかないし、最も俺らしい考え方だ。
「何にしろバイトを探す以前の問題もある。」
「？」
「履歴書書いてない。」
「…お前、本当にバイトする気あるか？」
ごもっともな返事だ。
それに対して俺は何も返さなかった。
「でも丁度良かった。」
「丁度良かった？」
俺はその里村の一言に疑問を投げ掛けると里村はこう言ってきた。
「俺も丁度、バイトしようかなって思ってたんだよ。」