Cold Phantom [前編]
※※※※※※

男って単純。

よくは覚えていないけど、いつかどこかで聞いた言葉である。
そう言われると確かにそんな気がする。
俺が男だからこそその意味が良く解るのかも知れない。
対象が自分以外でも然りだ。
「猿って、姫納先輩と仲が良いんだな。」
俺がそう質問したのもその一環だった。
面接後の帰り道、日が沈みきり暗い青の空に所々に星が瞬き始めたそんな時間帯。
駅前から距離が離れ閑静な住宅地に入るなり俺は猿にそう聞いた。
「え?…いきなりだな。」
猿は驚いた表情でこちらに向き直る。
「いきなりになる様にタイミングを取ったんだよ。」
向き直る猿の顔を見ながら俺は話を続けた。
「何だか、姫納先輩と会話してる時は表情が違うなって思ったんだ。」
「そうか?」
「うん、何て言うかいつも以上に元気になってたり、かと思えば恥ずかしそうにしてたり。表情が色々変わってた。」
「うーん…普通そんなもんじゃないのか?」
「何て言えば良いかな、イキイキしてるんだよな。」
そう言って俺は少しだけ間をとり一言こう言った。
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