Cold Phantom [前編]
「お前、もしかして姫納先輩の事好きなんじゃないのか?」
俺はそう言うと猿は更に驚いた表情をした。
「猿、お前解りやすい奴だな。今更だけど。」
「…俺が先輩の事を好きに?」
そう言って猿は考え込んだ。
しばらくして…
「そう、かもな。」
「え?」
「俺は、先輩の事が好きなんだと思う。」
猿は何も隠そうとせずにそう答えた。
あまりに素直過ぎて次はこちらが驚かされた。
「猿、お前の事だからもっと恥ずかしがると思ってたんだけど。」
「…いや、本当は自分もよく分かって無いんだ。」
「へ?」
思わず変な声が出た。
さっきから猿の言いたい事がよく分からない。
猿もまた混乱…いやそこまでじゃないにしろ頭が回っていないのだろう。
しばらく無言で歩いていたが、猿が急に立ち止まり俺に言った。
「気になる人なんだ、先輩は…」
「それってつまり恋なんじゃ…」
「気になるってのは…純粋に人として気になるって事だよ。」
「悪い、言ってる事がさっぱり解らん。」
俺は考え事をするかの様な表情で猿を見つめた。
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