Cold Phantom [前編]
猿はゆっくりこちらに視線を向けると返事を返した。
「先輩と俺、似た者同士かもって思ってるんだ。」
「祥子先輩とお前が?全然似てなくないか。」
「境遇…みたいなやつかな。」
そう言ってまた猿は歩き始めた。
「先輩、あぁ見えて結構苦しんでるんだよ、色々と…」
「…何か複雑だな。」
「複雑過ぎて俺にも分かって無いんだけどな。」
そう自嘲気味に猿は笑いながら言った。
「自分でどうしたいのか良く分からないけど、一つだけ言える事は力になってあげたいなって密かに思ってるんだ。」
「やっぱり、好きなんだな。」
「かもな。」
「…お前、そこまで言っててまだ分からないのか。どう考えたって好きとしか聞こえないぞ。」
「だから、色々と複雑なんだよ。」
そう言っている間に、帰路が別れる曲がり角に近付いた。
猿がその分かれ道へと足を向けた時、俺は猿に言った。
「猿、境遇ってなんだ?」
俺は猿の言う先輩に似た境遇と言う物が気になった。
それを聞いた猿は…
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