Cold Phantom [前編]
祥子がヒステリックを起こす前に私自身が発狂しそうな勢いだった。
そんな私を見て先生も流石に話を止めた。
「ごめん、ちょっと急に色々と言い過ぎたね…」
「い、いえ…ちょっと色々と整理し足りない私も悪いと思いますし…」
「ごめんごめん、俺ちょっと無神経な所があるからそれを治せっていつも周りの看護師に言われてるんだけど中々…」
先生はそう言って一旦落ち着いてくれた。
私もとりあえず先生から貰った紅茶を口にして落ち着いた。
「でも、祥子ちゃんが本当に記憶喪失なんですか?私的にはまだ信じられません。」
「こんな事で嘘はつかないよ。」
「それも、そうですね。」
医者がそう言うのだからそうである。
納得がいかない云々を私が言ったところで、医者の言う事実に勝てる筈がない。
祥子は長期に渡る記憶喪失…それが混乱した頭でとりあえずまとめあげた結論だった。
「うん、それだけ解ってくれたら十分。そして大切な事はこれから話すよ…」
先生はそう言って微かな間を開けて話を始めた。
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