Cold Phantom [前編]
「これ良いなぁ、可愛いし。」
「…」
何とも想像し難い一言を先輩は発した。
なんと言うか、ある意味凄い美的感覚の持ち主だと妙な感心を覚えてしまった。
それとも俺の感覚がおかしいのか?
「私、これ買っちゃうね。」
先輩はまるで小さな宝物でも拾ったかの様にその不細工なかぼちゃのキーホルダーを持ちながら意気揚々とレジへと足を運んだ。
「あ、先輩。」
「うん?」
俺はその後ろ姿に向かって先輩を呼び止めた。
あまり距離がなかったから先輩はすぐに振り向いてくれた。
「これ、つがいがあるみたいッスよ。」
と言いながら、そのダンボールから先輩の持っている同じ形のかぼちゃのキーホルダーを取り出した。
違うのは、先輩のキーホルダーは目と口が水色で俺のはピンク色だった事だ。
「本当だね、箱の中がごちゃごちゃだったから気付かなかったよ。」
と言いながら先輩は交互のキーホルダーを見比べた。
しばらくして…
「やっぱりこっちかなぁ、青色好きだし。」
先輩はそう言ってピンク色の方をダンボールに戻した。
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