Cold Phantom [前編]
それからしばらくして観覧車は降り場に着いた。
何だかかなり長い時間を観覧車内で過ごしたような気がしたが、降りてみると意外と時間が経ってない事に気がついた。
だが、その間に雨は勢いを無くしていて小雨になっていた。
「だいぶ止んでるね。」
先輩は空を見上げながらそう言った。
通り雨なのか陽が雲の間から差し込み始めていた。
「ヒロっ!…と、あれ?」
そこに突如として現れたのはみーちゃん先輩だった。
俺ははっとなった。
祥子先輩が居なくなってから先輩に携帯で連絡していたのをすっかり忘れていた。
傘を差しているのにいるのに服がずぶ濡れだった。
「みーちゃん?」
「あぁ、えーっと…」
「先輩、なんて言うか…その。」
そんな俺たちのやり取りを横目に祥子先輩は口を開けた。
「みーちゃん。」
「ん、なに?」
「ありがとね。」
祥子先輩の一言に、みーちゃん先輩は驚いた。
「は、ははっ、もしかしてばれちゃってたりとか?」
「まぁ、そう言う事ッスね。」
俺はそう告げるとみーちゃん先輩は一つため息をついた。
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