Cold Phantom [前編]
※※
「すいませ~ん。」
見慣れた特別棟に聞き慣れない声が響いた。勿論特別棟の部室を使っている全ての人の声を聞き分けるなどと言う芸当は持ち合わせていないが…そう、雰囲気がそう思わせた気がする。例えるなら、初めて来た電車の駅で行きたい駅にはどの電車に乗れば良いのかを通いなれた人に聞いてくるかの様なそんな雰囲気のある声だった。
「あの子の声よね?」
私の隣を同じく歩いていたみーちゃんが私に聞いてくる。当の声の主は私たちが今行こうとしていた道筋から歩いてこちらに近付いてくる。
他に人が見当たらないから間違いないだろう。
「みーちゃんの知ってる子?」
「私も祥子に同じ事聞こうと思ってた所だよ。」
と言うことは二人とも知らないと言うことだ。
声の主はやがて目前にまで近付いてくる。
身長は並くらいだが少なくともみーちゃんよりは少し高い位で、少し童顔めな顔が印象的な男の子だった。
モテる…ではなく、可愛がられる方のルックスで、可愛いと言っても女の子っぽい容姿と言う事では無く、純粋に幼い男の子の雰囲気そのままにただ年齢を重ねただけと言う感じの人だった。
「良かったぁ、ここの棟があんまり広いからちょっと迷子になっちゃって。」
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