Cold Phantom [前編]
何だか様子がおかしい。
戸籍上で亡くなっていると言う時点で十分に不明な点ではあるのだが、それ以上に変な所があるとなると想像すら出来なかった。
「わかりました。仕事が終わり次第そちらへ向かいます。」
「はい。お待ちしております。」
そう言って、電話は切られた。
俺は少し寒気がした。
姫納祥子と言う女の子は既に亡くなっている。
それじゃあ、今生きているあの子は一体何だと言うのか。
もし、今の電話の言う通りであれば、あの子は「姫納祥子」と言う名前では無いと言う事にもなり得る。
記憶を失う前の友達、もしくは家族の名前、色々とあり得るが、今はまだそれを知る必要はない。
今必要なのは真実だ。
「本当の名前が無い女の子…。」
ポツリとそう呟いた。
俺は真実がどうなのか気になって仕方がなかった。
名前が無いなんて…
それじゃまるで…
まるで…
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