Cold Phantom [前編]
だが、進路指導が俺に何を言わせたいのかは解っているつもりだ。俺の学校生活の大半をつぎ込んだ物の事だろう。
「そんなこと決まってるじゃないッスか。俺の学校生活は吹奏楽無しには語れないっすよ。」
そう、この中学に通う最たる理由は部活の吹奏楽だった。
勉強はからっきしだったが、学校ではトランペット使いの猿とも言われる位に吹奏楽に取りついた音楽馬鹿だった。去年参加した金管ソロの大会で県大会でもベスト4に入り、全国大会一歩手前で落ちてしまった物のこの中学では未だになし得なかった偉業として校内で表彰されるまでに至ったほどだ。
そんな生き甲斐を今更放棄するなんて出来ない。
「やっぱりな、高校でも続けるつもりなんだろ?」
「無論ッス。」
「そっか、それならやはり言っておかないといけないな。」
と小さなため息を吐き、こんな衝撃発言をしたのだ。
「お前が行こうとしている高校の吹奏楽部、今年で廃部になったそうだ。」
「えっ…」
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