Cold Phantom [前編]
先輩がどう言う答えを望んで質問してきたのか…この場では何も解らない。
「多分、会った事無いっすよ。人の名前や顔はすぐ覚える性格なんで間違いないっす。」
「…そっか、うん、そうだよね。今さっき自己紹介したばかりなのに覚えてるも何もないよね。」
先輩はすぐ理解してくれたようだ。
返事が少し遅れて返って来たのがちょっと気になったが…
しかし、そんな質問をされると当然疑問に思う事がある。
「でも先輩、どうしてそんな事を思ったんっすか?」
その最たる疑問がそれだった。
初めて出会った事を理解していてそう言う質問をしてきた。
変に思うのは仕方ない。
しかし、返ってきた返事は…
「何となく、かな。」
そんな返答だった。
「何となく…っすか。」
「うん…うーん」
俺がそう返事すると今度は考え込んでしまった。
事態がよく飲み込めず、俺が出来る事は先輩の言葉を待つ、それだけしかなかった。
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