Cold Phantom [前編]
そして、返ってきた言葉は…
「何となく…しかやっぱり言い様がないかな。」
「そうっすか…」
俺はまたそう呟いた。
そう言われてしまっては赤の他人相手に追求出来なかった。
隠し事をしてしまうくらいだ。本当は何かしら答えが欲しかったのかもしれない。
それだけの真剣さが垣間見えたから…
「ごめんね、何か変な話しちゃって。」
先輩は小さく肩を落として謝罪する。
小さな笑みと一緒に…
「あ、いや、その…こっちも力になれなくて申し訳ないっす。」
「ううん、ありがとね。」
俺のぎこちない返事にまた笑顔で返してきた。
(やべぇ、間近でみたら可愛過ぎる…。)
先輩の笑顔に俺はまたしどろもどろになってしまった。
出来るだけ目線を外して俺は…
「と…ところで、先輩の家ってどこっすか?」
「えっ?」
俺はそう言ってすぐ心中で後悔した。
「いや、その…女の子一人で帰るのは危ないから送ろうかなと…あ、嫌なら断っても…」
と、話の途中で…
「うん、それじゃお願いしちゃおうかな。」
「えっ、いや、その、冗談です…けど。」
そう言ってまた後悔してしまう。
なんだかんだ言いながらも、妙に何かを期待してしまう。
男の情けない性だった。
< 87 / 321 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop