Cold Phantom [前編]
「冗談なの?」
「いや、その…軽い男だなとか思ったりしなかったっすか?」
「ううん、別に。むしろ送ってくれるなら送って欲しいかな。」
そう、先輩は言ってくる。
そのあまりの無防備ぶりに俺は驚くと同時に呆れてしまった。
「それって、先輩の家を他人の男が知ってしまうって事っすよ。」
「うん、それくらい分かるよ。でも…ヒロ君はそんな事出来る男の子じゃない。私はそう思う。」
先輩はまた無防備な言葉を俺に返してきた。
ここまで来ると天然記念物級だなと、その時は思っていた…が。
「私ね、人を見る目はあると思ってるよ。私のこの目はヒロ君に危機感を感じてない。そう言う男の子だって訴えてる。」
「またそんな事言って…男って気が変わり易い隠れた狼みたいな物っすよ。」
「襲われた時は…襲われた時だよ。」
「!?」
俺は…その言葉に絶句した。
無防備とか、そんなレベルでは無かった。
むしろ、襲われようとするかの様な言動が飛び出しさえする。
「先輩…良く無事に生活出来たっすね。」
「そりゃそうだよ。だって、ほいほい色んな人にこんな事言わないよ。ヒロ君で3人目かな。」
「3人…も?」
「「襲われた時は襲われた時」は初めてだけどね。」
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