あなたしか見えなくして

「う、嘘だろ？」
　翔太はガシっと両手で花子の両肩に触れる。花子はブンブンと首を振る。
「本当のこと。本当にごめんなさい。翔太をだまして、付き合ってた」
「花子。俺は本当にお前のこと好きだったんだぞ!!」
「ごめんなさい。ごめんなさい……」
　花子を抱きしめる。耳元から鼻をすする音がする。
　泣いてるんだね翔太。
「俺は好きなんだ……」　
　ああ、私。とても酷い女の子だね。翔太のこと私の都合で振り回した。“好き”っていう彼の気持ちをグチャグチャにした。ごめんなさい。私みたいな女の子をもう絶対に好きになちゃだめだよ。絶対にだめなんだから。あなたはとてもいい人。なんだから。
「最初から振られる方がまだましだ……花子……花子……」
「ごめんね」
　目から涙が流れた。翔太に同情したのではなく。だまして付き合った自分の愚かさに。