あなたしか見えなくして
******

 ドキドキ……ドキドキ……
 胸の鼓動が五月蝿い。なんなの? この胸のドキドキ。
 夕焼けは沈み、まん丸な月と砂のように小さな星達が、一人夜道を歩く花子を照らす。季節は夏。恋にはもってこいの季節。
 なんで智里君は私の髪にキスをしたんだろう?
 顔が熱い。花子は自分の頬は真っ赤なリンゴ色をしているのだろうと思いながら自分の左頬を触る。
 ハア――
 ため息が出る。
 智里君は私のことが好きなのかな?
 自分の唇を人差し指でなぞってみる。
 あ……乾いてる。
 バックの中からガサゴソとリップを出す。リップの匂いは甘ったるいストロベリー。ストロベリーは花子にとっては恋の匂い。リップを塗り終わり、バックの中に入れると鼻で甘ったるい匂いをすってみる。
「私、智里君にハートを奪われたカモ……」
 自分にしか分からない気持ちを夜空に囁いた。
 
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