【奏】春に降る雪
一礼をして事務所を出ようと足を向けた。





「!?」





少し開いたドアの向こうに立ってる人に言葉を失う。



どうして?




何でハルがいるの?
帰ったんじゃなかったの?




『家のカギ忘れた事に気付いて……』




明らかに動揺してる口ぶり。




今のやり取り、全部聞かれてたんだ。




気まずさから何も言えない私にハルは苦しそうに言った。





『茜、…ごめん』




そのまま口を閉ざすハル。




そんな辛そうな顔は見たくない。





「ハル?私、ハルを困らせたかった訳じゃないよ。

私の方こそ昨日は酷いこと言ってごめんね?

ハルは何も気にしなくていいの。

今まで通りのハルでいて」




私が言う事じゃないのかもしれないけれど。




ハルは誰にでも気遣える心を持っているって知ってるから。


私の気持ちに気を病まないで欲しい。




そんな気遣いしなくていいから……




「ハルは笑っていてくれればそれでいい」





私、今ちゃんと笑えてるかな?





笑って言えてると、いいな。





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