朱鷺
何もしなかったのに、気まずくて朱鷺はいつにも増して黙っていた。
「・・・朱鷺君、ごめんね」
真理が顔をのぞき込むようにして言った。はっとした朱鷺は真理と目を合わせて、目を落とした。
「朱鷺君、ごめんね」
返事がなかったせいか、、真理がまた言った。朱鷺は小さく、イラッ、とした。
これが、真理の癖?というのか、気の使い方である。自分がなんにも悪いことをしていないのに、朱鷺が黙っているとこうやって突然あやまってくる。真理としては、自分が何か彼をたいつくさせたのか、知らぬうちに気に障ることを言ってはいないか、不安になるからつい、先にあやまってしまう。けんかしたくないから、先にあやまってしまおうという計算も少しはある。理屈はどうであれ、つきあい始めた当初から、とにかく真理にとって朱鷺は永遠の最愛の人だ。日を追うごとに愛情は増えていく一方だ。でも世間で言う通り3年もたつと、マンネリという言葉もよぎる。真理はなお一層朱鷺に気を使って、嫌われずにいたい、と思っていた。・・・でも、かわいそうに、その気使いは反対の方向へ作用していく。
「ごめんね」
「うるさいなぁ」
朱鷺が眉間にしわをよせて、顔で真理を拒否した。真理は自分がしつこく言い過ぎたことがわかった。ここでまた、それに対して、ごめんねを言ってしまいそうになる。あせる気持ちと、ほとんど見たことがない朱鷺の怒った顔に真理の涙腺が刺激された。
母親にしかられた子供のように、眉毛を八の字にして涙をにじませる真理を見て、こんなことで泣くなよ、いちいち、とイラッと思った、その直後、俺もこんなことでいちいちいらつくなよ、と自分を恥じた。
「ごめん、ごめん、怒ってないよ。ちょっと仕事のこと考えてただけだよ」
「・・・朱鷺君、ごめんね」
真理が顔をのぞき込むようにして言った。はっとした朱鷺は真理と目を合わせて、目を落とした。
「朱鷺君、ごめんね」
返事がなかったせいか、、真理がまた言った。朱鷺は小さく、イラッ、とした。
これが、真理の癖?というのか、気の使い方である。自分がなんにも悪いことをしていないのに、朱鷺が黙っているとこうやって突然あやまってくる。真理としては、自分が何か彼をたいつくさせたのか、知らぬうちに気に障ることを言ってはいないか、不安になるからつい、先にあやまってしまう。けんかしたくないから、先にあやまってしまおうという計算も少しはある。理屈はどうであれ、つきあい始めた当初から、とにかく真理にとって朱鷺は永遠の最愛の人だ。日を追うごとに愛情は増えていく一方だ。でも世間で言う通り3年もたつと、マンネリという言葉もよぎる。真理はなお一層朱鷺に気を使って、嫌われずにいたい、と思っていた。・・・でも、かわいそうに、その気使いは反対の方向へ作用していく。
「ごめんね」
「うるさいなぁ」
朱鷺が眉間にしわをよせて、顔で真理を拒否した。真理は自分がしつこく言い過ぎたことがわかった。ここでまた、それに対して、ごめんねを言ってしまいそうになる。あせる気持ちと、ほとんど見たことがない朱鷺の怒った顔に真理の涙腺が刺激された。
母親にしかられた子供のように、眉毛を八の字にして涙をにじませる真理を見て、こんなことで泣くなよ、いちいち、とイラッと思った、その直後、俺もこんなことでいちいちいらつくなよ、と自分を恥じた。
「ごめん、ごめん、怒ってないよ。ちょっと仕事のこと考えてただけだよ」