朱鷺
「※△×※♪■◇※!!!!!!!」

 絶句して(まっ、唇ふさがれているんだからしゃべれないけどね)目を閉じるのも忘れていた。キスされているんだから、抱きしめ返すぐらいすればいいものを、薫を壁に押しつけて他のところも少しぐらいならさわることもできるのに、朱鷺は棒立ちのまま固まってされるがままだった。
 その後、どうやって帰ったか朱鷺はよく覚えていない。地に足がついてなくて、ふわふわ帰った気がする。唇が気になって気になってしかたがないが、さわると余韻が消えてしまいそうで、さわるのもしばらくがまんした。初めて会った時、セクシーだと思ったあの薄い唇がここに重なったと思うと身体が熱くて、毎日寝苦しかった。
 朱鷺は前より一層通うようになった。薫のキスが目当てと言われたら否定できない。何度か唇にふれるだけのキスをした後、薫の舌が入ってきて、身体がつながったような興奮を感じた。ぬるっとしたその感触、薫の身体の中もこんな風に湿っているんだろうと思うと熱くなった。でも、あいかわらず朱鷺は薫を抱きしめられない、誰もいない真夜中の階段で、服の上からでもさわれなかった。
 朱鷺は何度かさりげなさを装って薫を誘った。(ちっともさりげなくなかったけど、ハタで聞いていると声がうわずっていたので)「休みいつ?」「飯喰いに行こうか」「ディズニーのチケットあるよ」薫は「わぁ、嬉しい」と言ったが、ふたりきりで外で会うことはなかった。
 20何回目かの階段でのキスの時、その前の回には大胆にも薫は朱鷺の股間を撫でた。朱鷺は飛び上がるかと思った。反応してしまうのが、顔から火が出るほど恥ずかしかった。だから必死で下半身を落ち着かせた。でも、そこまでされて黙っていることもない、とやっと朱鷺は思った。誘っていると、とってもいいわ
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