朱鷺
思える」
由美子は軽く首をかしげて、付け加えた。
「うーーん、ちょっと違うかな?良く言えば『その時』『その時』は本気だってことかな?気が変わりやすいと言った方がいいのかな?」
朱鷺は、作り笑いでいたが、由美子の目を見られなかった。


 それから、薫は帰ってこないことが増えた。 
薫とすれ違う生活になって。朱鷺はあきらめと、同じくらい薫への執着を感じていた。
顔が好きとか、身体が好きとか、具体的なことは正直言うと、どうでもよかった。朱鷺は、薫に好かれたかった。薫に自分だけを好きでいてほしかった。やきもちのセリフを、言いたくなかった。どんとかまえているように見せたかった。責めなければ、そのうち自分の愛情に気がついて、薫がおとなしくなると、思っていたかった。


 薫がめずらしく明け方帰ってきた。
 酔っている。服をぬいで、朱鷺の寝ているベッドにもぐりこんでくる。朱鷺は気がつかないふりをした。ねぇ、ねぇと薫は身体をこすりつけてくる。どーせ、酔って欲しくなっただけだろう。俺でなくてもいいんじゃないのか・・・・朱鷺は、薫のキスをよける。すると薫が下にもぐる。さっきからさすっていたものを、直接さわろうとする。よせよ・・・朱鷺が言った。薫は朱鷺のパジャマのズボンをおろすと同時に股間に顔を突っ込んできた。やめろってば、あわてたように朱鷺が言った。
 ああ、薫の口の中が熱い。先をつんつん舌でつつかないでくれ、声が出そうになる。くびれにねっとり舌を回さないでくれ、ダメだって、握ってない方の手でそこをいじるな、俺はそこは使わない、くすぐったい
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