『声が聞こえた』で始まるラブストーリー
「あ…ありがとう。
何…話すの?」
何も動じていないのを装って彼の反応を伺った。
「…なんでもいいんだ。
緒方さんとなら何でも。」
表情が緩やかになり、口角がきゅっと上がる。
どうしてこんなことが言えるのだろう…
どうして”私なのに”こんなことを言ってくれるのだろう…
『緒方さんとなら』…
これが私の中で大きく波打っていて、
顔が熱くなっていく。
愛想だけでこんなこと言えるほど、女の子に慣れてるのかなぁ…
などと、まだ彼を疑う私の傍らで
信じても、いいのかな…安藤君だったら…
そんな想いがただ膨らみ始める。
人とたくさんお話することさえ慣れなくて、
まともに目を合わせて喋ることもできない私は
もう、目の前に安藤君がいるだけでドキドキしているのに。
目の前で微笑んで…”私だけ”との小さな空間。
息苦しい、でも知りたい…
”どうして…そんなこと言ってくれるの?”
どうしよう…訊きたい…
たった一言、それで返事を聞けばいいじゃない。
そう、が…頑張らなくちゃ。
だって…