『声が聞こえた』で始まるラブストーリー

「あ…ありがとう。
何…話すの?」


何も動じていないのを装って彼の反応を伺った。



「…なんでもいいんだ。
緒方さんとなら何でも。」

表情が緩やかになり、口角がきゅっと上がる。



どうしてこんなことが言えるのだろう…


どうして”私なのに”こんなことを言ってくれるのだろう…



『緒方さんとなら』…


これが私の中で大きく波打っていて、

顔が熱くなっていく。


愛想だけでこんなこと言えるほど、女の子に慣れてるのかなぁ…

などと、まだ彼を疑う私の傍らで


信じても、いいのかな…安藤君だったら…

そんな想いがただ膨らみ始める。




人とたくさんお話することさえ慣れなくて、

まともに目を合わせて喋ることもできない私は


もう、目の前に安藤君がいるだけでドキドキしているのに。



目の前で微笑んで…”私だけ”との小さな空間。

息苦しい、でも知りたい…




”どうして…そんなこと言ってくれるの?”




どうしよう…訊きたい…

たった一言、それで返事を聞けばいいじゃない。


そう、が…頑張らなくちゃ。


だって…


< 5 / 22 >

この作品をシェア

pagetop