僕にキが訪れる
行くべき場所へ行く必要がなくなったと同時に、自分にはやるべきことも何一つなくなった。

感染が発覚した当初は暇さえあればひたすら寝て過ごしたが、しかしそれも数日で飽きた。

というより、寝過ぎて寝られなくなった。

仕方がないので家にある本を読むことにしたが、これもすぐに飽きがきた。

ただでさえ本よりも空いているスペースの方が広い状態の本棚である。

そんな大したことのない量の本を毎日ひたすらに読んでいては、すぐに読む本もなくなってしまうというものだ。

二度も同じ本を読む気は起きず、またやることがなくなってしまった。

わざわざ新しい知識を持つ必要もないと気付けただけでも儲けものだろうか。




それからは、腕や足に生える芽を間引きつつ、ひたすら思考にいそしむ毎日を送った。




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