僕にキが訪れる
もちろん感染などはしない。

それは、僕はわかっている。

けれど、人々にとって、コレは全てが謎の病なのだ。

世間では、様々な憶測が飛び交っている。

エイズに誤解が多いように。

この病にも、誤解が多数ある。

それこそ、触るだけで感染するくらいのことも。

僕も感染するまで症状の詳細を知らなかった。

だから、きっと彼女も、この病気がどういうものか、理解していないに違いない。

そして、僕に近付いていたことを後悔するだろう。

もう近付かないように、と思うだろう。


……あぁ、それでいい。


それで、いいんだ。


僕は独りがよかったんだから、それでよかった。

これでよかったんだ。

離れてよかったんだ。



そうだったはず、なのに。



どうしてこんなに僕は傷ついている。



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