僕にキが訪れる
ならば打ち明ければよかったのだろうか?

僕が木病であることを。

どうしようもない病を身に宿していることを。



……できなかった。



そうすれば初めから、こんなことにはならなかったというのに。



彼女の笑顔を、もっと見たいと思ってしまった。



少しくらいなら大丈夫だろうと、油断して、慢心して。

光に吸い寄せられる蛾のように。

近付いていってしまった。

ダメだと言い聞かせているのに、僕は。



その安らかさを、欲してしまった。


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