僕にキが訪れる
直接の原因ではないことは、わかっている。

別に、僕が友人に秘密を話してしまったことが、直接の原因でないことくらい。

たとえば、あの友達を連れて来る途中に子猫のことをもっと話しておくとか、少女が飛び出すのを止めることさえできれば、最悪の事態は防げた。

そう、どうにかできた。

約束を破ったことは、一因に過ぎない。



けれど、ダメだった。



強迫観念めいたものが、身に染み付いてしまった。

誰かを裏切ってしまう、それ自体が既に恐怖の対象だった。
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