僕にキが訪れる
不自由な体を起こそうとして、ふと、階下から何か音が聞こえたような気がした。


空耳だろうか?


そう思い、耳を澄ます。


また鳴った。


やたらと軽快なチャイム音。

誰かが来訪した証拠。

定期健診はまだ先だ。

ではセールスマンだろうか?

こんな家に訪れる者など、それしかいない。



そう思い込もうとする一方で、高鳴る心臓。


懐かしくすら感じる。


最近何度も聞いていた、この音。



でも、まさか。



だって、来るわけが。



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