僕にキが訪れる
あの人は、気がつけば近くにいた。
僕が引いていた線を、軽々と飛び越え。
そして今も、まるで壁があればぶち壊すとでも言いたげに、ドアを叩いている。
その証拠に、
「よし、そっちがその気ならこのドアぶち破るからねー!?」
慌てて僕は階段を駆け下りた。
まさか本当にぶち破る気じゃ。
いや、彼女ならやりかねない。
あの華奢な腕で、それでも無理矢理壊してしまいそうだ。
不自由な関節をぎしぎしと唸らせ、僕はドアロックを外した。
そして、恐る恐るドアを開ける。
そこには、あの人が、いた。
強気そうな目を爛々と輝かせ、はぁはぁと肩で息をしつつ、それでも毅然と立って、こちらを見つめている。