僕にキが訪れる
「どーして、そんな大切なこと言ってくれないのよ!
辛いこと、きついこと、何でも言えばいいじゃない!
どうして1人で抱え込もうとするの!
辛いなら、そう言いなさいよ!
大変だって、言いなさいよ!
そんなこと、1人で抱え込まないで、言ってよ!
それとも、私はそんなこと言えないほど信用足らないの!?」


一瞬、呆気に取られてしまった。

こんなにも激しく、けれど、優しい言葉を聞いたのは、初めてだったから。

彼女は確かに怒っていた。

けど、その理由は、僕が考えたものとは違うものだった。



僕を憎んでいたわけでは、なかった。



やがて、彼女は静かに涙をこぼした。

目が潤んでいたのは、この為だった。

その目をふと上げ、僕の腕に視線を注ぐ。


正確には、僕の腕に生えた、芽を。
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