僕にキが訪れる
「名前を聞いたことはあったけど、何にも知らなかったからさ……だから、調べてみた。
それで、いろいろ大変なこと、改めて知って」


ふと、顔を俯ける委員長。

肩がわずかに震えているように見えるのは気のせいだろうか。


「……あぁ、この人は独りで苦しんでたんだな、って。
それをわからずに、私は1人で笑ったりしてたんだって思って。
何で気付いてあげられなかったんだろう、って、思った」


「それは……普通、気付く方がおかしいよ」


それでなくとも、僕は今までずっと、本音を隠して生きてきたのだ。

人に気持ちを悟られぬよう、それだけは上手くやってきた。

その僕が殊更に隠そうとしていたんだ、気付くわけがない。
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