僕にキが訪れる
「あ、また生えてる」


僕の体から生えているいくつかの芽を、彼女は丁寧に抜いていく。

もう僕は、自分の力でそれらを間引くこともできない。



あれから、2ヶ月程。



病状は悪化の一途を辿り、髪の毛の一本一本までも、細い枝となっていた。

自力で生活ができなくなった僕は、診断を受けたあの病院に収容されていた。

といっても、何の治療の手立てもない。

病気の進行を遅らせるような薬さえ、まだ存在していない。

医者にできることは、ただ自分の目の届くところに置いておくことくらい。

せめてもの対策として、窓のない部屋を用意してもらったが、それも所詮は気休め程度に過ぎないだろう。

まぁ、仕方のないことだ。

生活の補助をしてもらえるだけ、ありがたいというものだ。
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