僕にキが訪れる
彼女、委員長は、僕の身が病院に移されてからも、毎日顔を見せに来てくれた。

そして、あのエセカウンセリングの時と同じように、ただ一方的に話し、笑い、怒って、また笑う。

違うのは、僕にはもう、ろくに相槌を打つ力も残っていないということだけ。

けど、彼女はわずかな僕の表情の揺らぎで、全てを察知してくれた。

ありがたかったけれど、同時に申し訳なかった。

彼女はもう自由であるはずだったのに。

こんな僕のことは放っておいてくれて構わないのに。

もう、十分満たされたのだから。

しかし、そのことを伝えたら、彼女は首を横に振り、


「私が、近くにいたいの」


そう言って、ただ傍にいてくれた。

その一言で、僕がどれだけ救われているか。

キミは知らないだろう。

それを伝える手段が、もうろくに残っていないことが、少し歯痒い。
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