僕にキが訪れる
「前にも、言っただろう?
こんなのは、全然、苦しくもなんとも、ないんだって。
ただ、悲しいと、思うんだ。
キミの、旦那さんの、姿、見ること、もうできないんだなぁ、とか。
キミをただ、泣かせることしか、できないんだなぁ、って……
また、裏切って、しまう、な、僕、は」


「裏切られてなんて、ない……
もしそうだとしても、許すって。
私だって、前に言ったじゃない……」


「あぁ、そうだった、ね……
あの時ほど、嬉しかった、こと、は、ない、よ。
ありが、とう」



……口が、また、回らなくなってきた。


ダメだ。


まだ。


言えてないことが、1つ。


残っているんだから。



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