僕にキが訪れる
「……見せに来るに、決まってるじゃない。
今までだって、ずっとそうしてきたんだから。
毎日毎日、バカみたいに顔出してたじゃない。
自分でも無礼だなって思うくらいの態度でさ。
そんな私が、来ないと思う?
頼まれなくったって来るわよ。
お茶だって自分で用意して来る。
もちろん、冷たいヤツ。
それで、毎日毎日クラスの報告をしてやるわ。
学校を出たら、会社のグチを聞かせてやる。
使えない上司のグチを、延々と語ってやるわ。
きっとキミは、うんざりしてもう来ないでくれって思うんだと思う。
けれど、それでも来てやる。
何度でも。何度でも。
ダンナの顔だって見せに来てやるわ。
すっごいかっこよくて優しい人。
キミが嫉妬するくらいの人よ」


「……それ、は、たのしみ、だな」


はは、と笑って見せると、彼女も笑った。

けれど、その声は、どこか笑っていないような。


そう、作り笑い。


誰よりも得意だったから、相手がそれをやったらすぐわかる。
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