僕にキが訪れる
信じられなくて、少女は何度もソレを揺らした。

また目を覚ますのではないかと。

起きて、自分の話を聞いてくれるんじゃないかと。

いつものように、笑ってくれるんじゃないかと。

何度も、何度も問いかける。

体だったソレを揺らし続ける。

けれど、もうソレは、二度と、人には戻らない。

ようやく理解した後、少女はそっと呟いた。


「……結局、最後まで、名前で呼んでくれなかった、な……」


一度でいいから、名前で呼んで欲しかったけど。

もう、それは、叶わない。

ソレはもう、喋らないし、何も聞こえていないのだから。

けれど少女は、それでも聞こえているのだと信じて、声を出す。
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