僕にキが訪れる
「本当よ。昔、あなたが生まれるずっと前にね。
人が木になっちゃうっていう病気があったの。
今もあるけどね、ちょっとずつ、治し方がわかってきた。
けどね、昔は、どうにもならなかったの。
この人も、そうだった」


昔を思い出すように、母親はそっと目を細めた。

女の子は、まだ信じられないような顔をしている。


「おかあさんのしってるひと?」


「えぇそうよ。ううん、知ってるだけじゃなくて……
大好きだった人。大切な人」


「えぇー? きがすきだったの?
おかあさん、へんー」


どうも上手く伝わらないらしい。

母親は少々へこんだ。
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