僕にキが訪れる
「やっほー」


昨日とほぼ同じ時刻、今度は叫ばれる前に玄関を開ける。

相変わらず無駄に元気そうな声。

その手には今日の天気には不似合いな僕の傘。


「ハイ、傘」


「ん、どうも」


そしてそのまま扉を閉めようとして、


「ちょっと!」


腰に手を当て、憤慨したような声で彼女が言う。


「わざわざカウンセリングに来た可愛い女の子の為に……」


「茶の一杯くらい用意してあるよ」


続きを先読みして言った僕を見て、彼女はニコリと笑った後、「よろしい」と口にした。


全く、図々しい人だな。


しかし不思議と、不快ではない。


閉めかけていた扉を再び開き、僕は昨日と同じように彼女を居間に迎えた。
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