僕にキが訪れる
「それでも、いずれは知らせないといけないんじゃないかな」


黙っていると、医者がぽつりとそんなことを言った。


「大丈夫ですよ。深刻になる前に追い返すようにしますから」


同情なんかされる前に。

面倒なことになる前に。

適当な理由をつけて、僕は離れようと考えている。

僕の言葉に、彼はそうかいと、寂しげに口にしただけだった。
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