【短編】SAKURA*MAGIC
桜に寄せる、彼女の願い
木々から溢れる眩い光に誘われて
見上げれば一面に桜色の空。
散りゆく花びらが
頬をそっと優しく撫でた。
「桜吹雪……?」
掌を空へと伸ばせば、幾枚もの花びらが乗っては風に飛ばされ……
一面、桜色の世界を作り出している桜並木の中、数メートル先に小さく見える後ろ姿に目が止まった。
……まったく。
目を離すと、スグにコレなんだから……
ひとつ溜息を吐いて、その後ろ姿を早足で追い掛けた。
「希咲!!そろそろ、帰ろ?」
「もうちょっとだけ!!
……ね?お願い、カズ」
桜色の中に映える真っ赤なショールを羽織った希咲が、俺の声に振り返ると同時に、両手を合わせ小首を傾げてそう話し掛けてくる。
1個下の幼馴染み―――萩原希咲(ハギワラ キサ)。
スッゴク可愛らしいそんな行動をされたら、許したくもなるんだけど……