【短編】SAKURA*MAGIC
本当、希咲くらい会おうと思えばいつでも会えるっていうのに。
……でも、大和が言ってるだけだし、電話…してみるくらいいいよな?
うん。様子伺いってことで、さりげなく……さりげなく……
「母さん、ちょっと電話してきてもいいかな?」
「いいわよ〜!やっぱり、希咲ちゃんでしょう?
和樹は、昔っから希咲ちゃん贔屓なんだもの」
「まぁ、そうかもしれないけど……とりあえず、ありがと。スグ、戻るから!!」
母さんの茶目っ気たっぷりな笑みはスルーして礼を告げると、握り締めていた携帯だけを手にしたまま、エプロンを外して店の外へと飛び出していた。
少し歩けば、点々と立ち並ぶ街路樹さえもが鮮やかなピンク色の桜で、なぜか希咲を重ねてみてしまい、ドクドクとうるさいくらいに早くなる鼓動に戸惑ってしまう。
ガードレールに浅く腰掛けて、
探さなくとも憶えてしまっているダイヤルを呼び出して、電話をかけていた――…