【短編】SAKURA*MAGIC
「……ダーメ。また、風邪こじらせるわけにはいかないの。
希咲だって、学校行きたいでしょ?」
今日はまだ暖かい日和だけれど、風は少し冷たいし。
これでも一応、心配してるわけで……
溜息を吐きつつそう話し掛けながら、頭の上に付いた花びらを撫でるように払っていると、希咲は上目遣いで恨めしそうに見つめてくる。
俺がその行為に弱いことを知ってそうしているのか?
……と言いたくなるほど、希咲はここぞという時には上目遣いで俺を見上げてくる。
でも、どんなに可愛かろうが上目遣いで見上げられようが……
「ダメなものは、ダメ。
そろそろ帰んないと、俺も仕事に戻らなきゃいけないんだから」
「……ん。じゃあ……」
キュッと俺の袖口を握り残念そうに表情を曇らせた希咲は、何かを言いかけながらも口篭り、俯いてしまった。