【短編】SAKURA*MAGIC
夜桜の下
「夜桜……?」
「うん。希咲、見たがってたし……風邪、治ってくれてよかったよ。今年は諦めてもらわなきゃかと思ってたから」
「カズ、ありがと!!」
午後8時過ぎ――…
小言をうるさく言う大和をどうにか納得させて、数日前にも一緒に来た桜並木に希咲を連れて来ていた。
スッゴク嬉しそうに笑う希咲に、俺も嬉しくなるのを感じながら、そっと頭上の桜を見上げた。
「スゲ……ッ、」
「キレーイッ!!!」
闇の中に浮かび上がる桜色の花々が咲き誇る様子に、俺も希咲も単純だけどありきたりな言葉しか浮かばなかったようで。
幻想的なその光景に見惚れていた――…
暫くして、そっと横に佇む俺より遥かに小柄なその存在を何気なく見て、……息を呑んだ。